




人気者や花形のことを「スター」と呼ぶことがある。
団地にも、スターを呼ばれる団地がある。その名はスターハウス。
今回ご紹介するのは、それらが並ぶ千葉県松戸市の常盤平団地。
さあ、星を見に団地へ行ってみよう。

目次

【住所】千葉県松戸市常盤平
【交通】新京成線常盤平駅・五香駅より徒歩
【戸数】4,823戸
【間取】1DK~3DK/30㎡~53㎡
弧を描く新京成線に包まれるような立地の常盤平団地。
周囲は緑に包まれ、過ごしやすい住環境が特徴。大規模公団住宅としては初期に計画された団地であり、古式ゆかしい中層棟がメインであるが、中心部にはY字型の平面形状をした「スターハウス」が多く残っているのも特徴。

団地概要

団地巡り
「森」で観る「星」は、美しい。
千葉県松戸市の常盤平団地は、昭和35年第一次入居が開始された団地で、関東でも最初期の大規模団地である。団地の名前は公募により、松戸市の松から連想された「常盤の松」にちなみ「常盤平」になったとのこと。
常盤平団地の魅力は、「スターハウス」と「緑豊かさ」の2点があるように思う。今回はそんな常盤平団地の魅力を、「スターハウス」と「緑豊かさ」の2点を中心に考察する。



スターハウス住棟
スターハウス。
複数の棟がバランス良く配置されている。

スターハウス内部。三角の螺旋状に階段が配置され、その周りに住居がある。

1-55号棟。サインはタイルである。
団地を照らす、スターハウス。
常盤平団地を語る上でのキーワード1つ目、「スターハウス(54型C-2型)」。これは住棟形態の一つで、Y字型の平面形状を有しているものである(一般的には、1フロア3住戸の中層棟のことを指す場合が多い)。各住戸の採光性が高く配棟の自由度も高いため、初期の大規模公団団地などで多数採用された。常盤平団地では、地形の関係上一般的な階段アクセス型住棟が設置しづらい2-24-1街区に、スターハウス住棟が10棟配置されている。
地元住民からは「星型」と呼ばれており、当時団地内を走っていた新京成バス(現在の松戸新京成バス)の停留所に「星型住宅前」があったほど。
現在でも全てが現存しており、常盤平団地のランドマーク的な存在となっている。



団地と緑
スターハウスも緑に包まれている。
中層棟と緑。

果たしてここは団地なのか森なのか。

足元にも緑。
「森に団地」か、「団地に森」か。
この団地の周りは森かと錯覚するほどに緑豊かで、美しい。
これは戦後、都市の無秩序な拡大を防ぐために作られた首都圏緑地帯計画(グリーンベルト計画)緑地帯に、千葉県松戸市が指定されたことによるもの。制限地域では、特別都市計画法施行令(昭和21年9月10日、勅令第422号)により建築制限がかかる。そのため、公団団地と緑地帯を一体整備し、土地を有効活用するパターンが数多く見られた。
常盤平団地では、団地全体の使用建蔽率が10%となっており、「森の隙間に団地がある」ような雰囲気である。また団地の中のみならず、南北に貫く常盤平けやき通りは「新・日本街路樹100景」に、東西に抜ける常盤平さくら通りは「日本の道100選」に選ばれるなど、街一帯が緑あふれる美しい光景となっている。

作品撮り

いかがであっただろうか。「団地」というより、「森」という雰囲気の常盤平団地。
当時は海外から学者が見学に来るほど注目された、先鋭的な建物群であった。戦後、都市の無秩序な拡大を防ぐためにできた団地と緑地帯。建設当初は「環境破壊だ!」と批判されたが、その後都市の拡大は防げず、辺り一帯も都心の一部と化した。よって、団地の周りだけ緑が残っているという皮肉な状況となっている。
現在、常盤平団地は建物の老朽化と入居者の高齢化が大幅に進んでいる。URは令和3年度2月末の資料で、同団地の「ストック再生」を目指す旨を公表した。これは建物の既存流用が前提の「ストック活用」とは違い、団地全体の建て替え、高層化による土地の縮小化も視野に入ることを意味する。
街全体にとっては、若返りによって地域の魅力向上を図ることができ、建物の高層化などで土地の有効活用も期待できる。しかし、住民を中心に反対活動も行われているようで、この先難しい状況になることが予想される。私自身も、団地が半世紀以上守り抜いたであろう常盤平の森が無くなるのは寂しい気もする。
住民にとって、街にとって、URにとって。どうあるのが一番よいか、今後議論の機会が多く設けられるであろう。

まとめ
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